from 宮城哲郎
今回の記事は、ちょっと僕の中でも興味深い題材であり、正直、書くかどうかも迷った。
理由はシンプルで、僕が取り上げるような内容では無いと思っていたからだ。
だが、そうは言っても僕の仕事の一つに、スポーツ経営者を支援するという目的があるので。
そういう視点で考えた場合、「スポーツを根付かせる」という観点は、
きっと、クライアントを始め、ビジネススクールのメンバー、メルマガの購読者、
SNSでフォローしてくれている人達のお役に立てると思ったので、こうして今、パソコンを開いているところだ。
という事で、早速、あなたに僕の考えをお伝えしたい。
プロスポーツが「地域に根付く」の定義とは?
観客動員数から考える
そもそも、プロスポーツが「地域に根付く」という言葉の意味を、しっかりと考えないといけないと思うのが感想。
なぜなら、そうした「定義」が無いままに、どんなに議論をしたところで、
それぞれの価値観の「尺度」が全く違うので、答えの着地点は見つからないからだ。
例えば、僕はサッカーの世界によく携わるので、サッカーを事例にする事が一番、話がしやすいのだが。
スポーツが地域に根ざしているという言葉を「サッカー」に置き換え、「サッカーが地域に根ざしている」と置き換えた場合。
サッカーが地域に根ざし文化になっているイメージで考えると、きっと、あなたも欧州や南米を連想する事だろう。
そして、単純にその国や地域のプロスポーツの人気があるかどうか?
これを測るのに最も分かりやすのは「平均観客動員数」だと思ったので、まずは、あるデータバンクサイトから実際の数字を比較して、色々と考察してみようと思う。
サッカー王国ブラジルは「サッカーが地域に根ざしているのか?」
実際に僕はブラジルに住んでいたので、ブラジルをイメージして考えてみる事にしたのだが。
ブラジルには、ブラジル全国選手権という、ブラジル全土にある州で勝ち上がったチーム同士でリーグ戦を行い、チャンピオンを決めるリーグがあり、人気も物凄いのだが。
実際に、その観客動員数の平均を見てみると、2016年シーズンで「17,160人」という数字で。
なんと、これは同じ年のJリーグの2016年シーズンの「17,968人」よりも少ないという風に表示される。
僕が参考にした数字は以下のサイトだ。
気になるリーグをチェックすると平均観客数が出るようになっているので、
あなたも色々なリーグの数字を見てみてはいかがだろう?
ちなみに、一番多かったのが、ドイツのブンデスリーガで「43,309人」
次にイングランドのプレミアリーグで「36,451人」
スペインのリーガ・エスパニョーラで「28,168人」と続いている。
補足だけど、お隣の中国スーパーリーグは「22,193人」でJリーグよりも多く動員している。
個人的な印象だと、中国にサッカーが文化として根付いているなんて、とても思わないのだが…(※中国のお友達ごめんね?)
これを見ると、どうやら「プロスポーツが根付く」という観点が、「観客動員数」にあるかどうかと言われたら、若干意味が違ってくるのかも知れない。
なぜなら、観客動員数というのは、「プロスポーツの試合会場」に足を運んでいる人数の違いであり、
そう考えるとスーパースターが多く存在する国のリーグには、多くの人が訪れる可能性もあるだろうし、そもそもの人口が多い国にも、観客数は流れる事は充分考えられるからだ。
※ちなみにインドのスーパーリーグは、2016年シーズンは「20,219人」である。前年度から7000人近く下がっているので、もしかしたら一時的なブームだったなのかも知れないが。
他にも交通の便で、試合を観戦すると思いたった時、行きやすい国や地域のリーグだったりするかどうかでも変わるだろう。
そうなると、単純に「試合観戦者の数」だけを見ても、「根ざしているかどうか?」という答えにはいきつかないという事だ。
競技人口から考える
次に考えられるべき要員と言えば、そのスポーツの「競技人口」だろうが、この競技人口というもの対して、正確なデータを出す事は不可能だと思っている。
なぜなら、「その競技をやっている、やっていない」という判断は、個人それぞれ認識が違うからだ。
例えば、僕はこれまで、この記事の中で、「プロスポーツが地域に根ざす為には?」
そして、そのスポーツというキーワードをサッカーに置き換えて「サッカーが地域に根ざす為には?」という風に話を進めているが。
そのテーマで行くと、僕のようなサッカー好きの存在は、「地域にサッカーが根ざす為には必要な対象の一人」になるはず…※ここまでは大丈夫?
だが、残念ながら僕はサッカーの競技者ではない。
もちろん草サッカー程度で実際に「プレーをしている」事はしているのだが、そうなると、僕はバスケットだってやっているし、ゴルフやテニスだってやっている「競技者」という事になる。
よって、これからの話は、色々な数字やデータを公開している人達から集めた、「憶測・予測」レベルの話だという事を予め了承してほしい。
※一応、政府統計ポータルサイトを参考にどうぞ → https://www.e-stat.go.jp/)
あなた自身で細かく調べてもらってもよいが、ここでお話ししたいのは「競技人口」ではなく「プロスポーツが地域に根ざす為に」という視点なので、細かい数字は置いといて、それら大量のデータをもとに話を進めたいのだが。
どうやら日本国内でのスポーツ競技人口(実際に運動している物)ランキングは、以下の通りになることがわかる。
1位 ウォーキング・ジョギング ※約4,900万人
2位 筋力トレーニング ※約1,500万人
3位 ボーリング ※約1,400万人
ちなみに、サッカーの競技人口は「480万人」とされており、10以内にも入っていない。
この数字を踏まえて競技人口から考えても、「プロスポーツが地域に根ざしているかどうか?」それを判断するのもどうやら難しそうだ。
実際の競技者は試合を観にいけない。
そもそも、これは乱暴な持論かも知れないが競技をやっていると、プロスポーツの試合を観戦しに行くことすらも難しいのが現状だ。
例えば、ブラジルから帰国して、サンビスカス沖縄というクラブを作った僕は、
そのクラブ関係者やクラブの理念に賛同してくれたメンバーを集い、社会人チームを結成しているのだが。
そのチームの試合やら何やらが理由で、プロスポーツの試合をほとんど観に行った事がない。
僕自身、FC琉球というチームの創設初期からいるメンバーだし、当然OBとして試合の一つでも観に行きたいと思ったのだが、所属するチームの試合と日程が被ってしまうのだ。
「いやいや、試合後にでも観に来てくださいよ?」
そんな事をチームのスタッフにも言われていたが、暑い中、試合を終えて、体力も使い果たし、その上で公共交通機関を利用して、試合を観に行くのはとてもじゃないがハードルが高い。
そして、これは何気に自分の子供が部活に通っている場合も同様だ。
今の子供はとても忙しい。
毎週末どこかで必ず試合が行われるいるので、とてもじゃないが定期的に観にいく時間を確保するのも難しいだろう。
これだと「競技者をターゲットとしたマーケティング」を、プロチームがやった所で、競技者自身が足を運んでくれる確率は少ないだろう。
だが、先ほども話したが、「こうした競技者が増える事は、スポーツが地域に根ざす為には絶対的に必要な事」のはず。
ただ、それと「プロスポーツが地域に根ざす」という事に、その競技者が増えることが形として、【なかなか後押しできない構造】があるかも知れない、そんな可能性を持つ必要もあると言いたいわけだ。
プロスポーツビジネスが難しい理由
そして、ここまで考察した上で、僕は結論を出した。それは…
プロスポーツビジネスを地域に根ざす為に必要な要素や要因を、「データや数字を頼って導き出す事」をやめるという事だ。笑
ここまで読みすすめてもらって申し訳ないが、膨大な数字に加えて、限定条件も違う中で、
「こうしたらプロスポーツは地域に根ざす事ができる」
そう定義するのは時間がかかると思ったからだ。
もちろん、誰か偉い学者さんが、こうした結論を出してくるかも知れないが、
もしも、すでにそれが定義かされているのであれば、とっくにこの問題は解決されているはずであり。
という事は、今、現時点がは数字の様な「目に見えるデータ」ではなく、もっと別の要因から、この問題に取り組むべきだと僕は考えたわけだ。
では、どうしたらプロスポーツを地域に根ざすことが出来るのか?
それを以下の視点から考えてみることにする。
人は「感情」でモノを買う。
これは、マーケティングを勉強すると、よく出てくる内容なのだが、
人は何か、物を購入する際に「感情」で物を買い、あとで「理屈」をたてて正論化する生き物だというものだ。
ちなみにこれは「購入」だけでなく「行動」もそう。
※「購入する」という「行動」だからね。
例えば、僕のクライアントに物凄く「時計」が大好きな経営者がいる。
どれぐらい好きかと言うと時計ひとつ買うのに「何百万円」かける事も、全く意に介さないぐらいの好きっぷりだ。笑
残念だが、僕には正直、その感覚は全く理解できない。
なぜなら、時計なんてのは僕にとっては「時間」を計るものであり、別に時間すら分かれば、数百円レベルの物でも良く、そもそも携帯があれば良いとさえ思っているからだ。
そんな事にお金を使うぐらいなら、僕はよっぽどマーケティングやビジネス関連の教材や、トップクラスの経営者の集まるセミナーや勉強会に、参加した方がメリットがあると思っている。
なぜなら、それが僕にとって「投資」であり、自分の現状をより良くしてくれるお金の使い方だからだ。※ここ覚えて置いてね?
だが、そのクライアントに対して、「なぜ、こんなに時計に対してお金を使えるのか?」
こう質問すると、彼は決まって、「これも投資です。」と答える。笑
彼にとっては、こうした高価なモノを身につける事で、結果的に「その価値がわかる人と出会えるので仕事になる」
そう屁理屈を言ってくるのだ。
果たして、彼は頭がおかしいのだろうか?
いや、それは違う。
このような事は、きっとあなたにも理解できるはずだからだ。
自分にとっては価値を感じないものに、他人が物凄い価値を感じていたり。
その逆で、人に「頭おかしいんじゃないか?」と呼ばれるものに、平然とお金も時間も注いだりする場合もある。
もしかしたら、僕のお金の使い方に対して、「宮城さん、頭おかしいんじゃないか?」そう思う人も多いだろう。
だが、とうの本人は全く意に介さない。むしろ、その人が理解できない様な物に対して、
「いやいや、このお金の使い方は正しいし、
この結果が僕に良い未来をもたらせてくれる」
そう信じているのだ。
でも、この正体の裏には人が「感情」でモノを買っている事が、
理由として挙げられる。
買った本人はきちんと「考えて購入した」と思っているはずだが、実は、単純に「欲しい」から買っているのだ。
そして、その得体の知れない「欲しい」と言う感情に対して、これは投資だから…とアレコレ理屈をつけているのである。
だからこそ、僕らマーケッターはいかにして、その「欲しい」という感情を刺激出来るかが鍵となるのだが。
これこそが「プロスポーツを地域に根ざす」上でも、重要な要素ではないのか?と僕は考えている。
プロスポーツチームは何を売っているのか?
不思議な事がある。
僕はJリーグで一番好きなチームは「浦和レッズ」だ。
Jリーグ開幕時代のお荷物と呼ばれていた前、「三菱」時代から好きなチームだ。
きっかけは色々あるだろうが、僕以外にもレッズファンを多く、ご存知の通り日本で一番人気あるチームだろう。
だが、だからと言って「日本で一番強いのか?」と言えばそうではない。強い様に感じるがリーグ優勝だって1回しかしていない。
でも、不思議な事に巷で言われる「スポーツ人気の低迷」の一番の理由が、「勝てないから」と言われるのはなぜだろう?
単純に、強い、弱いが人気の良し悪しになるのであれば、もっと他にも人気のチームは出てくるはずだ。
じゃあ、なぜレッズは日本で一番人気があるのだろうか?
本拠地の埼玉が、昔サッカー王国であり地域にサッカーが根ざしているからだろうか?
でも、そうだとしたら…長くサッカー王国と呼ばれている静岡はもっと、成績に関係なく盛り上がっていても良いはずだ。
そもそも、その定義でいうとブラジルの全国選手権は、なぜJリーグより観客動員数は低いのだろう?
チケットが購入「できる、できない」の問題だろうか?
「ああ、そうか…!!日本ではサッカーの試合をテレビでやる回数が圧倒的に少ないからだ。実際にプロスポーツで一番人気のある、野球人気を支えているのはテレビの露出が多いからだし…」
そういう事をおっしゃる専門家もいらっしゃるが、では、なぜ野球はテレビ露出が多いのだろう?
今は、ちょっとお金を払えば、世界中どこの国のサッカーだって見ることが出来るのに、なぜそうしないのだろうか?
この様に、理由を考えれば考えるほど、色々な「矛盾」が生じるのがこのテーマなのだ。
要するに…
「プロスポーツチームが市場に対して、どんな感情が刺激しているのか?」
それを知らないといけないだろうし、
「自分達が売っているのは何か?そして、その売っている物で、どんな感情を刺激させるのか?」
これを導き出せないといけない。
その上で、先ほどから話している。「人は感情でモノを買う(購入という行動をする)」という事を引用するならば。
僕らは「なぜ、目の前の物に対して行動するのか?」
これが理屈ではわかっていないということなのだ。
理屈でわからないからこそ、感情で理解するしかない。
プロスポーツチームが地域に根ざす為に、どの様な「感情」を刺激するのか?それを見つける必要があるのだ。
興味が無いのに野球を見てしまう。
僕は、野球は全く興味がなく、正直日本のプロ野球は見ない。
でも、なぜメジャーリーグで大谷選手が出ると分かったら、わざわざ早起きをするのだろうか?
きっと、同じ「日本人」が海外で活躍する姿に、感情を動かされているからだ。
僕の友人に、やたら海外サッカーに詳しい、「野球部出身の経営者」がいるが、
彼はJリーグには全く興味が無いくせに、海外のサッカーばかりを観戦している。それはなぜか?
「日本の侍が世界で活躍する姿に競技は関係ない」
これが彼の理屈だ。
なぜ、バスケットボール部であり、サッカー経験もゼロで、
スポーツセールスライターの奈津子さんが、
男子の日本代表の試合はテレビでも観ないのにも関わらず、わざわざ「なでしこジャパン」の選手達の試合を観に、沖縄から飛行機のチケットをとって長崎まで行ったのだろうか?
※ その時の様子はこの記事から。笑
彼女曰く、
「自分は背も低かったのでバスケット選手時代は苦労した、
それなのに世界的に体格の劣るなでしこの選手達のあの姿を観たら、
自分も頑張らないと勇気をもらう」
それが彼女の理屈だ。
実際に、奈津子さんは、今のなでしこ人気低迷をなんとかしたいと思いたち…。
なでしこの試合をテレビでやらないのであれば、
私が放映権を買う!
そう言って、わざわざ「日本サッカー協会」にまで問い合わせた。
※ その記事はこちら → 放映権について
なぜ、みんなこの様な「不可解な行動」を取るのだろうか?
そこにはその人、本人の動機があり、その動機となる「感情」を動かされたからに他ならない。
なぜ、足に合わないのと嘆くのに、ナイキのシューズを子供達は喜んで履くのだろう?
きっと、スーパースターと自分を重ねているからだ。
この様に、僕らは「欲しい」というウォンツの感情で行動を決定されているのだ。
プロスポーツが地域に根ざす為に必要なことは?
「地域に根ざすという言葉」だけを拾うと、目に見えない「理屈ではない部分」をまずは理解する必要がある。
もしも、そのチームが地域に根ざせていないと嘆くのなら、何か地域感情を損ねているかも知れない。
そもそも、他にもっと「地域感情」を良い意味で刺激する行動をしたのか?そこにも注目する必要があることだろう。
どうやら「試合に勝ちます」だけでは、人の感情は動かないようだ。
逆に、試合に勝つことでどんな感情が動くのか?
これを考えるだけで「勝敗」とは、別の価値を見いだすことだって出来るだろう。
結局の所、「プロスポーツが地域に根ざす為」には、マーケティング成功の為に必須な「リサーチ」を怠ってはいけないというわけなのだろうね。
そして、ここからが重要なんだけど、僕らのような小規模の会社にとっては「地域やターゲットを絞る事は可能」であっても。。。
プロスポーツチームという公的な存在は「この絞る」という事が、とてつもなく難しいという事を理解してあげないといけない。
だって、そうでしょ?
例えば浦和レッズがさ…
「うちのお客さんは、年齢が30代以上の男子で、世帯年収がなんちゃら・・・で、仕事中でもサッカー話をしたくてたまらないような価値観を持った人物です」
みたいな事を言い出したら、これこそブーイングだよね。
マーケティング成功の為に必須な「リサーチ」をする事が必須。
だけど、彼らにとってこの「リサーチ」は物凄く難易度の高い物でもある。
それが、多くの人達を巻き込むプロスポーツという事業体の「宿命」なんだよね。客を選べないんだから。(※もちろん難癖ばかりつけてくるヤツ、差別的な行為をするヤツは受け入れないと思うよ?)
「客は選びます」と公言している僕にとって、完全に無理な戦場で戦っているわけだから、そうした視点で彼らのビジネスをみるのも面白いし、それを自分事に考える視点を持つのも大切だと思う。
さて、長くなったので、今回はこの辺にしたいと思う。
今日の記事のテーマをくれた「タスク」さんに感謝。
もっと、詳しいことが聞きたいのなら、ぜひ彼に相談すると良いだろう。
あなたのスポーツビジネスでも今回のテーマはすごく重要だ。
ぜひ、自分には関係ないと思わず「どうやったら自分にも活かせるか?」そうした視点で今回のテーマを考えて欲しいと思うし、
地域に根ざすのが難しいと嘆く前に、どれぐらいその地域の事(顧客)を深く理解しているのか?
これをもう一度考えてみよう。
これがスポーツを仕事にする為に、もっとも重要な要素だと僕は思っている。
それでは…
追伸 もしも、あなたが、スポーツビジネスで地域ナンバーワンを目指しているのなら。下記の無料メルマガで、動画やワークなどと一緒に学べるようにしてあるので、どうぞ。
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